当工房へのご相談の多い、そして大変ご好評いただいております、ルイヴィトン・スピーディのヌメ革パーツ交換修理。今回もスピーディのヌメ革パーツの総替え修理事例をご紹介するとともに、現行バージョンのスピーディの機能を持たせたカスタマイズ内容もご紹介したいと思います。
スピーディ ヌメ革パーツの総交換
バッグのオーバーホール(全解体)後、古い皮革パーツを取り除き忠実なデザインでパーツ作製します。
先ずは通常のスペック通りのヌメ革パーツ総替えがこちら。
パーツごとにじっくり見ていきましょう。
特徴的な丸手のハンドル。負荷のかかる部分は同様のヌメ革を裏張りし、両面ヌメ革にすることで既製品よりも強度を出しています。引張強度のあるナイロンテープ芯材を間に仕込んでいますので実際は三層構造になっています。コバはヌメ革の場合、叩いて染料調仕上げにすることでさらに堅牢なつくりになっています。丸手ハンドル部分はこだわりの手縫い仕立てです。手間がかかりますが細かい部分での美しさに違いが出てきます。縫製は素材に穴をあける、極端に言えば傷をつけている行為でもあります。縫製のテクニックはそのパーツの耐久性に大きくかかわる工程なのです。例えば、どれだけ最高級のレザーを使用したとしても縫製を含めた一つ一つの工程の技術がイマイチではそのポテンシャルを十分に発揮することはできないのです。
四か所の付け根革パーツ。捻引きは純正パーツと近い太さに先端を加工した捻引き工具で焼き捻を入れます。これがルイヴィトンのパーツ特有の雰囲気を醸し出してくれます。※リベット金具は取り外し、代替金具に交換します。
次にサイドのパーツ。特徴的なリーフ型の飾り革とパイピング。南京錠側にはホールも再現しています。
引手飾りも再現しました。パーツは全て古い残骸から正確に型取りしたパターンをもとに作製していますので違和感のない仕上がりになります。デザインというものは数ミリ変わると全く別物になってしまいます。パーツの丸み、カーブのつけ方どれをとってもそうです。
カスタマイズ事例 現行スピーディのストラップ機能の追加
近年のスピーディ型の製品にはショルダーストラップを取り付けるためのサイド構造が追加されています。古い型のスピーディのヌメ革パーツ総交換を行う際に、オプションでこの構造を追加することが可能です。
こちらが現行スピーディに倣って追加作製したストラップ取付用パーツ。中央にまっすぐ一本パーツが通ります。Dカンを取り付けているのでここにナスカン式のショルダーストラップを取り付けることができます。
全体を引きで見るとこのようなイメージ。この構造に変更する場合は、先ほどのサイドの飾り革は取っ払ってしまいます。ストラップを垂らしたときにどうしても構造上邪魔になりますからね。
お好みで手持ちのストラップをアレンジして取り付けても良いですし、さらに追加で同じヌメ革素材でショルダーストラップを作製することも可能です。ストラップの長さもお客様好みにオーダー作成可能です。