ヒロナガ鞄修理工房です。今回はbagのハンドル・ストラップ周りの破損のケースの紹介と修繕アフターをご紹介します。
画像のように根元から裂けてしまったケース。比較的、婦人bagに多いのですが、華奢なデザインでパーツの厚みが薄く、幅も1cm以下といったデザインでこのようにステッチラインから根こそぎ持っていかれる壊れ方をよく見ますね。
こちらがアフター。このバッグの場合少し工程が複雑だったため、ファスナーのステッチラインからいったん解体し、バッグ内側から縫製をかけなおしています。今回はぎりぎり元のレザーの残骸が使える長さで残っていたので、表面のレザーはそのまま使い、本革を一枚裏張りし、さらに補強のテープ芯を仕込んでパーツの強化を図ります。パーツ側面のコバも顔料で固めなおして、やっとパーツの修復が完了、元穴をねらって元通り縫製し組み立てていきます。
もう一件、こちらはケイトスペードの婦人bag。トリーバーチ、ケイトスペード、コーチなど中堅価格帯のブランド製品にみられるレザーと強靭な人工芯材がハイブリットになったつくりですが、この手の芯材は、芯材自体は非常に耐久性が高いものの、レザーなど天然素材の床面と張り合わせたときの相性が悪く、コバ側面の顔料の定着も天然素材に比べ弱いため、顔料が捲れたとたんにそれぞれのパーツがバラバラに剥がれていくような破損を起こします。
もともと修理のタイミングにおいて構造上厄介な製品なんですが、今回は一番最悪なケース、、自己修理で接着剤でがちがちに固めてしまってからのご来店というパターン。。これをやってしまうと修繕自体不能に陥りますので、今回は使い物にならない先端部分は最小限カットして生きた部分で作り直すという方法をとっていきます。
アフター。ストラップを立体的に見せるために内部を走っている細い人工芯材を一部落としています。補強芯材を仕込んで元穴にステッチを落とします。分厚く顔料を盛ったフィニッシュも再現し直して継ぎ目が目立たないようコバ塗料の調色もしています。
バッグ本体は何の問題もなく凄くきれいな状態でしたので、きれいに修繕出来てよかったです。ビフォーの段階のかなりひどい状態でもここまでのクオリティで修繕できることが理解してもらえるのではないでしょうか。
よくある誤解として、ハイブランドのほうが修復が難しいと思われがちなんですが、意外と中堅ブランドに使われている人工芯材の劣化損傷はリペア屋泣かせなところがありまして、きれいな修繕を目指すと案外こっちのほうが時間と手間がかかったりします。ただ愛着を持ってご愛用されてる品物はモノの値段以外に思い入れがある場合が多いですから、当工房では品物のレベルで判断して安いものなら安い修理でいいだろうという考え方はしていません。その製品の仕組みと特性を理解し、常に最善の修理方法をとるようにしています。
以上、今回は日常的なバッグの負荷のかかるハンドル・ストラップ周りの損傷の補修事例をビフォーアフター形式で紹介しました。
以前にも似たような事例をまとめた記事がありますのでこちらもご参考にどうぞ。
では、また次回の投稿をお楽しみに。